かどの太陽

2023 オイル・パステル サイズ可変

個展タイトル「もし太陽に名前がなかったら」(千葉県立美術館)と呼応するように、こっそりとスクリーンの裏側の角に描かれた太陽。
まるで子どもがクレヨンで描いたような本作は、山下+小林が幼児に絵を教えた際に、彼らの多くが無意識に画用紙の角に太陽を描く(描いてしまう、と言ったほうが正確かもしれない)という現象に、人の観念化のはじまりを感じ、強く印象付けられたことをきっかけに制作された。仏教では善悪、優劣、自己と他者…という「分別」によって人々の苦悩は生まれるが故に、世界をあえて丸のみにする「無分別智」を達成することで、本当の安心が得られると説かれる。
子どもが描く「かどの太陽」は、分別し観念化せずには生きられない人間の性による、世界制作のはじまりの太陽にも見える。

–神野有紗(千葉県立美術館学芸員)

おもな展覧会

2023 千葉県立美術館(個展)